バニシング・ポイント

反社会体制映画とはこのことなのかもしれない。今作はアメリカン・ニューシネマとしての、形をそのままに体現したような作風となっている『バニシング・ポイント』を紹介しましょう。アメリカン・ニューシネマという考え方は今では使われていないが、こちらの作品は1970年代に発表された作品ということもあって、その影響を受けている内容は物議をかもし出している。ではそんな『バニシング・ポイント』のあらすじを紹介していきましょう。

あらすじ

海兵隊、警察官、そしてオートレースのドライバーで、現在は車の陸送を仕事にしているコワルスキーは、デンバーからサンフランシスコまでの陸送を引き受けていた。普段から麻薬常習者でもある彼は、地獄の天使というバーに立ち寄って覚せい剤を仕入れようとしたとき、店の主人とサンフランシスコまで15時間で行くという賭けをすることになる。全速力で飛ばすコワルスキーの車を発見したオートバイ警察が、暴走する彼の車を追跡し始める。コワルスキーがとっさに車を悪路に乗り入れると、オートバイ警察はひとたまりもなく転倒してしまう。何とか警官を振り切った彼は、ユタ州に入ろうとしていたが、コワルスキーを待ち構えていたかのように国境にはバリケードが固められていた。だがコワルスキーはそんなことはお構いなく、減速することなくバリケードを無理やりにでも突破するのであった。そんなコワルスキーの暴走気味なニュースを聞いた盲目のディスク・ジョッカーのスーパー・ソールは興奮して、コワルスキーに通信をして、彼が捕まらないように誘導し始める。警察の通信に介入して内容を盗み聞きし、情報をコワルスキーに流し始めることで、コワルスキーは警察を振り回すようになる。国境を越えてネバダ州に入ると、今度はネバダの警察が彼の追跡を開始した。コワルスキーは自分が警察官であったときのことを唐突に思い出し、上官が少女を麻薬所持の疑いで取り調べの最中に、弱みにつけ込んで少女に乱暴しようとしていたのを止めた。ところが正義の元で行動した彼を上官が逆上して、彼を懲戒解雇してしまうように仕組んだのだった。過去の事を思い出しながら走っていると、スーパー・ソウルが再び通信を試みてきていた。通信から送られてきた情報どおり、数台のパトカーに追い詰められた彼は、やむなく車を砂漠に向けて加速し始めた。警官時代、雪国で恋人のベラと遊んだり、口論したりしたことを思い出したり、また海兵隊員の時に負傷兵を野戦病院へ運んでいる最中、ジープに砲弾が命中して、負傷したことといった昔のことを次々思い出していた。階層に浸っているときに大きな爆発音で意識が現実に戻る、何事かと思い見るとタイヤがパンクしてしまったのだ。タイヤの交換中に、ガラガラヘビに襲われそうになるが、砂金鳥の老人により命からがら助かる。老人は、彼に砂漠から抜け出すルートを教えると、そのままガソリンのある集落まで案内したのだった。

老人と分かれて逃走を続けるコワルスキーの元に、スーパー・ソールからの情報が入ってくる。今やアメリカだけでなく、全世界規模で自分が注目されていることを知ると同時に、彼の向かう道という道には、既に警察当局の網が張られているとの事だった。途中にコワルスキーはバイクに乗ったエンジェルという男と出会い、荒野の中にある彼の家に連れて行かれた。そこには裸でバイクに乗った女性がいて、コワルスキーに強壮剤や煙草を渡される。

その後エンジェルのアイディアで車をパトカーに偽装して非常線を突破したコワルスキーだったが、彼の行く手には巨大なパワー・シャベルが立ちふさがる。コワルスキーの心に一瞬の戦慄が走ったものの、彼は笑みを浮かべながらアクセルを踏み込む。猛然と突っ込んだコワルスキーの車は、火柱を吹き上げて空へと舞い上がるのであった。

休日映画三昧

作品について

過激、という言葉がこれほどまでに良く似合う作品も中々ないだろう。こういうものがアメリカン・ニューシネマといわれれば納得のいくのも不思議なものだ。元々こうしたアメリカン・ニューシネマという作品が誕生した当初、アメリカ国内が内包していた負の部分を作品として表現したときに、こういったジャンルが誕生しているのだといわれている。自由と平和を謳ってイギリスの植民地から独立してから、世界最大の大国として走り続けているアメリカだが、内側に芽生えている外側には漏れない様にした国の根幹に関わるような問題点が、多く潜在している状況にまでなっていた。もちろんそんなことはどの国でもあることだ、負の連鎖という意味では日本においても当然ながらある。

そんな社会に対して、若者達が必死に抗おうとしている当時のアメリカ世相を投影しているといっていい。作品の中でテーマとなっているのが何をしても無駄という『虚無感』で構成されている。このバニシング・ポイントにおいても、世間の力は負けながら最後には悲しい氏が待っている主人公が描かれており、憂鬱なままで物語が終了してしまうという内容だ。それはつまり、当時のアメリカはこうした感情を持ち合わせている人が多かった、ということになる。個人の無力さを表現し、体制に逆らうことで自分たちが圧殺されていく様を描いている姿は、夢も希望もない。何をしても無駄、そこまで行っても一人の力など何の意味も持たないとして、肯定されているのは今の人たちから見ても楽しくはないだろう。

そんなアメリカン・ニューシネマはベトナム戦争終了後に誕生した『スターウォーズ』のような夢とロマンを追求した作品を求めるようになり、明るくどんなときでも希望はあるといった活力に満ちている作品を求めるようになる。その影響を全面的に受けて、アメリカン・ニューシネマというジャンルは事実上幕を閉じることになったという。

バニシング・ポイントもそんな特徴を十二分に受けた内容となっており、見る人によっては現実世界とどこか重ね合わせてしまうこともあるかもしれない。だからこそ、今作を含めた映画にも当時をよく知ることでは良い資料に違いない。見ると憂鬱になるかもしれないが、当時のアメリカ人がどんな感情を持って日々を生きていたのか、そんなことを知りたいという人には一度視聴してみてください。

キャスト

コワルスキー
演:バリー・ニューマン
ラジオDJスーパー・ソウル
演:クリーヴォン・リトル
ドラッグ・ディーラーのジェイク
演:リー・ウィーバー
陸送屋サンディ
演:カール・スウェンソン
砂漠の蛇獲りの老人
演:ディーン・ジャガー
フーバー助祭
演:スティーブン・ダーデン
警官チャーリー
演:ポール・コスロ
中年警官コリンズ
演:ボブ・ドナー
バイカーのエンジェル
演:ティモシー・スコット
ヌード・ライダー
演:ギルダ・テクスター
ゲイのヒッチハイカー
演:アンソニー・ジェームズ
ゲイのヒッチハイカー
演:アーサー・マレット
ベラ
演:ビクトリア・メドリン

スタッフ

監督
リチャード・C・サラフィアン
脚本
ギレルモ・ケイン
原案
マルコム・ハート
製作
ノーマン・スペンサー
製作総指揮
マイケル・ピアソン
撮影
ジョン・A・アロンゾ
編集
ステファン・アーンステン
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